Q.22 遺伝子組換え技術を利用した育種とこれまでの伝統的な育種とはどこがどのように違うのですか、ネガティブなものも含めて教えてください。 | |
質問分類 | 8.遺伝子組換え技術と伝統育種について |
質問 | Q.22 遺伝子組換え技術を利用した育種とこれまでの伝統的な育種とはどこがどのように違うのですか、ネガティブなものも含めて教えてください。 |
回答 | 伝統的な育種における形質の導入や作出には、交配による品種改良や、γ線・X線などの放射線やエチレンイミン、エチルメタンスルホネートなどの化学物質によって人為的に突然変異を誘発する突然変異育種などがあります。これらも、生物の遺伝情報であるDNAを直接操作する遺伝子組換え体を作出し選抜評価する育種も、ともに、生物に遺伝的な変化を起こさせ、その結果従来とは別な品種を得るという点、および、最後には、得られたすべての品種の中から、目的に適ったものだけを選別するというプロセスを経る点で、共通しています。 では、前者2つの育種と、遺伝子組換え体を用いる育種とはどこがどのように違うのでしょうか。 その点を明らかにするため、伝統的な育種2種間の差異との関連で見てみます。まず、交雑による品種改良と突然変異育種との共通点は、遺伝的な変化が交雑しうる範囲内あるいはもとの種内に限られるということです。一方、組換え体を用いる育種によると、種を超えた遺伝子の導入により遺伝的な変化を起こすことが可能であり、伝統的な育種では解決できなかったハードルを超えることができます。なお、この、遺伝子が種を超えて移動することそのもののデメリットで科学的に証明されているものは現在ありません。 伝統的な育種のうちでも突然変異育種において、遺伝的な変化はランダムに起こり、目的形質をあらかじめ選ぶことはできません。しかし、組換え体を用いる育種においては、目的とした形質を与える遺伝子を意図的に導入することができます。もっとも、組換え体を用いる育種においても相同組換え の場合でない限り、遺伝子の導入先を特定することはできないため、遺伝子の導入部位によっては意図しない遺伝的変化が起こる可能性があります。 結局、得られたすべての品種の中から目的に適ったものだけを選別するというプロセスを最後には経なくてはならない点で、育種によらない自然突然変異を含めても、3者と組換え体を用いる育種とは大きく異なるものではありません。 以上は科学的な話です。伝統的な育種と比べたときの組換え育種のネガティブな要素は、むしろ、歴史的経験がないという不安感ということになるでしょう。組換えによって、生態系にとって新しい形質が導入されたり、新しい分布を示したりすることの長期的な成り行きが、我々の想定の範囲から外れる可能性は否定しきれません。そのことから来る不安が、従来の育種と組換え体を用いる育種の違いの最大のネガティブ要素と言っていいかもしれません。 |