Q.52 遺伝子組換え技術の有益性、役立ちうる場面について教えて下さい。 | |
質問分類 | 15.その他 |
質問 | Q.52 遺伝子組換え技術の有益性、役立ちうる場面について教えて下さい。 |
回答 | I.除草剤使用量の減少 まず、現在最も利用が進んでいる除草剤耐性作物(遺伝子組換えにより除草剤をまいても枯れないようにした作物)では、除草剤の使用量が減り、それに伴って農家の手間とコストを減らす効果があると考えられます。 現在、雑草を防ぐためには特異性の違ういくつかの除草剤を組み合わせて数回ずつ散布を行っています。しかし、除草剤耐性の遺伝子組換え作物を栽培した場合、農薬を撒いても雑草だけが枯れ作物は影響を受けずに済むことから、1種類の除草剤で確実に雑草を防除でき農薬の使用量は減り、農家にとっては、除草にかかった手間とコストを削減することができます。とりわけ、長年、雑草除去のために農地を掘り返すことによって肥沃な表層土が風で剥脱される土壌の流亡に苦しんできた米国では、表土を掘り返さずとも雑草を枯れさせる除草剤耐性の遺伝子組換え作物に、期待が集まっています。 II.殺虫剤使用量の減少 殺虫剤の使用量を減らす効果もあります。害虫抵抗性を持つ遺伝子組換え作物、すなわち特定の害虫による被害を受けない作物は、害虫による被害が小さいため、散布する殺虫剤の量を減らして同じ収穫を上げることができます。 III.アレルギーの軽減やワクチン効果 健康に役立つ応用も開発されています。たとえば、体内でビタミンAとなるβカロチンを含むコメの開発は、途上国におけるビタミンAの欠乏対策に効果があると言われています。また、ダイズやコメに含まれるアレルギー成分を組換え技術によって減らすことで、アレルギーの人でも安心して食べることができるようになると考えられます。 さらに、医療での有用性も注目されています。「食べるワクチン」は、食用の植物内で作った成分を、食べて効果を発揮させるワクチンです。たとえば、組換えによってスギ花粉症の緩和に有効な成分を含んだコメを食べれば徐々に免疫がつきます。この開発により、アレルギーを軽減するだけでなく、ワクチン成分を精製する手間も省くことができると言われています。 IV.飢餓への対応 近年、森林の減少などの影響によって砂漠化や旱魃が進行し、一方で人口は増加し、人類が飢餓に直面する可能性が懸念されています。この点、たとえば、乾燥や冷害、アルカリ土壌に強い性質を備えた組換え作物の開発は、このような飢餓への対応として期待されています。 V.有用物質の生産 遺伝子組換え技術はもともと微生物の遺伝学的研究から開発された技術で、微生物による医薬品等の有用化学物質の生産では既に広く利用されています。これを植物に応用して、農作物に生分解性プラスチックの原料をつくらせたり、エネルギー資源として用いる(エネルギー作物)ことが研究されています。さらに、ヒツジのミルクなどに医薬品を分泌させ、動物工場として利用するアイデアも一部実用化されつつあります。 VI.環境汚染の修復 工場跡地などの土壌に残留しているトリクロロエチレン、重金属などの有害物質を、遺伝子組換え微生物を使って除去する技術(バイオレメディエーション)も研究が進められています。最近、日本のコメの一部でカドミウムの含有量が比較的高いことが問題になっており、Codexで検討されているカドミウムの残留基準を超過してしまうことが心配されています。このような場合にも遺伝子組換え植物を使って、耕作地の土壌中のカドミウムを吸収させることができます。こうした植物を使ったバイオレメディエーションは特にファイトレメディエーションと呼ばれます。 VII.医療面の貢献(遺伝子治療) 遺伝子組換え技術は、医療分野でも利用できます。遺伝子治療は患者の細胞に遺伝子を導入することにより病気を治療する方法のことです。傷ついた遺伝子や機能が失われた遺伝子の代わりに正常な遺伝子を入れる方法と、病気の原因となる遺伝子の働きを抑える方法とに大別されます。遺伝子治療は従来の対処療法では根治できなかった遺伝病やがんなどの根本的な治療法として研究が進められています。 |